「流せるシート」が詰まりの温床になるのは、原料の多くが長繊維セルロースに湿潤強度樹脂(PAE等)や増粘剤、界面活性剤が加わり、水に浸っても繊維間結合がすぐには切れない設計だからで、実験室の強い攪拌なら数十分で崩れても、家庭排水の緩い流速と節水型トイレの4.8〜6L洗浄水ではS字トラップや曲がりで折り畳まれ、トイレットペーパーの短繊維と絡み合い「ロープ化」して固形栓を作るのが実態である。さらに便や皮脂、キッチン由来の油脂と結びつくと石鹸化やゲル化が起き、硬水中のCa・Mg、漂白剤の次亜塩素や柔軟剤の陽イオンが架橋の橋渡し役となって“ほつれない塊”に進化する。低温期は増粘剤の粘度が上がり分散が一段と遅く、集合住宅の縦管合流部や屋外枡の渦流で他の繊維くずを巻き込み、短期間で握り拳大のラグに育つ。対策の第一原則は「便器に入れる紙はトイレットペーパーだけ」で、ウェットティッシュ類は蓋付きの防臭ゴミ箱に直行させる運用を家族と来客に周知することだが、どうしても流したい局面では少量を細かく裂き、小洗浄を避けて大洗浄+50〜60℃のぬるま湯1Lを追加して初速と水頭を確保する。既に流下音が鈍い、ゴボゴボ鳴るなど前兆が出たら止水→水位調整ののち、まずフランジ付ラバーカップで「押す1:引く3」を短時間×数セット、紙主体なら重曹とクエン酸の発泡で繊維間結合を緩めてから再試行する。シート主体のラグは薬剤で溶けにくいので、便器用オーガーを曲線に沿わせて先端を軽く回し「押し込まず絡め取る」を徹底し、通ったら同温のぬるま湯を流して仕上げる。絶対に避けるのはレバー連打での追い流し、90℃超の熱湯投入、塩素系と酸性の混用、ビニール密閉で強圧をかける力技で、陶器の亀裂や有毒ガス、逆流を招く。複数器具が同時逆流、黒い水や強い悪臭、床や天井の染みは縦管・枡領域のサインなので即プロを手配するのが最短最安である。再発防止は月1のクエン酸湿布でリム穴とサイホンジェットの通水を維持、屋外枡の泥と油脂を年1で除去、キッチンでの油流しをやめ、浴室の抜け毛はネットで回収、トイレには「流せる表記でも流さない」ステッカーを貼る——これだけで2025年の節水機でも詰まりリスクは実用上ほぼゼロまで抑えられる。